[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
祝詞語彙14
万葉集巻第一より
【十四番歌】
香具山と 耳梨山と あひし時 立ちて見に来し 印南国原
〇あひし時……「あふ」は古語では現代語と同じ「会う」という意味の他に、結婚する、向かう、争うという意味があった。ここでは「争う」
【補足】
「立ちて見に来し」(立って身にきた)のが誰かが、歌の中には書かれていない。播磨国風土記に、十三および十四番歌とほぼ同内容の説話があり、このとき仲裁したのは阿菩大神だったとある。
万葉集巻第一より
【十三番歌】
香具山は 畝傍を惜しと 耳梨と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古も 然にあれこそ うつせみも 妻を争ふらしき
〇うつせみも……「うつせみ」は「うつしみ」とも。今の世の人も。
【補足】
「うつせみ」は神葬祭詞などで、「あの世」に対する「この世の人」として用いられる例ばかり見るが、この歌のように、「神代」または「昔」に対比することもできる。つまり、異界もしくは時間の観念において対比、使用することができる。
祝詞語彙12
万葉集巻第一より
【十二番歌】
わが欲(ほ)りし 野島は見せつ 底深き 阿胡根の浦の 玉ぞ拾はぬ
〇欲りし……「欲る」に過去の助動詞「き」の連体形がついた形。「欲る」は中古以降あまり見かけない語。
〇拾はぬ……読み注意。ヒリワヌ。「拾ふ」はヒリウ。
祝詞語彙11
万葉集巻第一より
【十一番歌】
わが背子は 仮廬作らす 草(かや)なくは 小松が下(もと)の 草(くさ)を刈らさね
〇草なくは……カヤがないなら。「は」は仮定条件の接続助詞。
〇刈らさね……「ね」は終助詞で、親しみのこもった願望を示す。上代によくつかわれた。
【補足】
大意は、夫よ(旅の際の)仮の宿りがないなら、小さい松の下(に生えている)草をお刈りなさいな。
「は」は本来「ば」だが、形容詞や助動詞「ず」につくときは「は」となる。
祝詞語彙10
万葉集巻第一より
【十番歌】
君が代も 我が代も知れや 岩代の 岡の草根を いざ結びてな
〇知れや……「知る」は四段活用の動詞の已然形、「や」につき反語の意味。どうして知ることができようか。
〇結びてな……「て」は完了の助動詞、「な」は終助詞で意志を示す。結びましょう。
【補足】
「知れや」の「や」について。反語の意味のときは、活用する語の已然形が上にくることが多い。用例を見ると万葉集所載のものばかりなので、上代に特有といってよいかもしれない。
「草根をいざ結びてな」は、草をさあ結びましょう、ほどの意味。当時、松や草を結ぶことで、旅の安全を祈る習慣があった。