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祝詞作文ノート

宮司就任奉告祭祝詞2 幹部①

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宮司就任奉告祭祝詞2 幹部①

宮司就任奉告祭祝詞2 幹部①

 

 きのうに引き続き、本題部分について述べます。

 

 まず書き出す前にどのようなことを考えたのかというと、第一に、高天原から始めて、修理固成の御言依さしが受け継がれてきて、それでじぶんがこれからご奉仕申し上げる神社のご鎮座に至ったということです。

 

 第二は、ご鎮座以降、代々の神職を初め氏子崇敬者の信仰心により、神社の護持運営が行われてきたということ。

 

 第三は、神社の最近の状況を踏まえた上で、じぶんがお仕えすることになったと申し上げよう、ということ。

 

 これを順番に申してゆき、神饌をお供えする部分につなげようと考えました。

 

 前置きはこれくらいにして、さっそく一番目から順に、どのようにつくっていったのかを述べてゆくことにしましょう。

 

 結局は、高天原にいらっしゃるカムロキノ命、カムロミノ命の仰せで……という、よく式祝詞で見かけるかたちとほぼ同様なのですが、まず以下のようにしました。

 

高天原に事始め給ひし岐美(きみ)二柱(ふたはしら)の大神等(たち)の御言(みこと)依(よ)さしを

 

式祝詞では「高天原に」のつぎは、「神留(づま)り坐す」、あるいは「事始めて」「神留り坐して事始め給ひし」と、みっつのパターンしかありません。ここでは「ことをお始めになられた」ということで「事始め給ひし」としました。

 

ただ、「こと」といっても具体的になんなのか明確ではなく、いろいろな解釈ができるところです。私がここで想定したのは、国生み、神生みを初め、ありとあらゆることをお始めになった、ということでした。前述のように、修理固成を軸に書いていこうと思っていますので、当然、修理固成も始められたとの意を含んで「事始め給ひし」としました。

 

始めたのはつぎの「岐美二柱の大神等」ですから、「始め」には敬語をつけます。「し」は過去の意味。

 

 その「岐美二柱の大神等」は字そのままの意味でしたら、男神・女神二柱ということになります。その男神・女神、式祝詞であるかたちではカムロギ、カムロミノ命が、具体的にどの神様なのかについては諸説あります。

 

 また、例えば「神漏伎・神漏弥命」(式祝詞の祈年祭での表記)のように、ちゃんと書かないのかという意見があるかもしれません。ご神名を申すことについては、お名前を申すのをはばかる立場と、お名前を申すことでご神威の発動を願う立場とがあると思います。ここではカムロギ、カムロミノ命に申す祝詞ではなく、これからじぶんのご奉仕する神社のご祭神へ申すことから、「岐美二柱の大神等」としました。

 

 では「御言依さしを」の「御言」とは何なのか。これは修理固成せよ、との「御言」を想定しています。古事記によると、以下のようになっています。

 

ここに天つ神諸の命もちて、伊邪那岐命、伊邪那美命、二柱の神に、「この漂へる国を修(をさ)め理(つく)り固(かた)め成(な)せ」と詔(の)りて……

 

 この「修理固成」が天つ神諸から、イザナギノ命、イザナミノ命へ、またその後、三貴子へとつぎつぎに伝わっていき、遥か後代のわれわれにまで届いてきていまに至る、という思想があります。この思想を踏まえて、作文したいと考えたわけです。

 

 ではその「修理固成」の「御言依さし」が伝わってきたようすを、どう書くか。もちろん具体的にいちいちあげてゆくより、おおまかに申す方が無難でしょう。そこで、

 

天つ序(つぎて)・国つ序と樛(つが)の木の弥継継(いやつぎつぎ)に伝へ奉り給ひし随(まにま)に

 

 としました。「序」は順番、次第という意味。高天原でも葦原の中つ国でも(「御言依し」が受け伝えられて……)ということから「天つ序・国つ序」と並べました。つづく「樛の木の」は「つぎつぎ」にかかる枕詞です。その「つぎつぎ」は「継継」としていますけれども「次次」とも書けるところです。

 

 つぎの「伝へ奉り給ひ」は二方面への敬語をつかっています。ここで「伝へ」たのは多くの神々、「伝へ」られたのも神々ですので、どなたへの敬意かがはっきりしませんけれども、どちらも敬意を払うべき対象ですので、どちらにも敬語をつかいます。時代がくだると、伝え、伝えられてきた中にわれわれに近しい人々もでてくる、ということになりますが、だからといって敬語をつかわないわけにはいきません。

 

 蛇足ながら、二方面に敬語を用いるのは平安時代以降なので、上代では、こうして二方面に敬語をつかうことがありませんでした。例えばこの場合、上代ならば「伝へ奉り」としていたところです。式祝詞はこんにち作文する上でも、なお規範でありつづけていますが、この点には注意が必要です。

 

 あすはこのつづきの部分、じぶんが宮司として奉職することになった神社の、ご鎮座の状況についてどう書いていったか、説明したいと思います。

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